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漢方薬の治療選択

CHINESE MEDICINE

漢方薬の治療選択|神奈川県平塚市にある発達障害・漢方外来 - きりんカームクリニック

漢方薬の治療選択

漢方薬の治療選択

漢方薬の治療選択

同じ症状でも人によって処方内容が異なり、個人の体質に応じてオーダーメイドの処方となります。考え方の⼀つに、体質が虚証タイプか実証タイプかを見分ける評価法があります。大まかにいうと、虚証は虚弱で新陳代謝が悪いために身体が冷えやすいタイプ、実証は活発で抵抗力が強いタイプといえます。
虚証には身体を温めてエネルギーの不足分を補う治療、実証には身体を冷やして余分なものを体外へ取り除く治療が合います。年齢によって生理的な変化があり、⼀般的には小児期は実証傾向にあり、加齢とともに高齢者では虚証傾向になっていきます。一方で生まれながらにして虚証のこともあります。漢方薬には虚証向け、実証向けのものがあり、どちらでも大丈夫のものもあります。
注意していただきたい点は、虚証タイプの人が実証向けの漢方薬を飲むことで体調を崩しやすくなる点です。反対に、実証タイプの人が虚証向けの漢方薬を飲むことには支障がありませんが、無効な場合があります。

治療効果の出現時期

漢方の治療対象の項目でも触れましたが、漢方についてまだあまり馴染みがない方にとって漢方薬と聞いて抱くイメージとして、効果が現れるのにかなり時間がかかり、ゆっくりとじっくりと治療していく、という印象をお持ちの方がまだまだ多いかと思います。
ところが歴史を紐解くと、約2000年前には感染症の治療としてまず急性疾患の治療法として生薬治療が広まりました。後の時代に栄養状態の改善により人の寿命が次第に長くなり、慢性疾患が増加したことで体質改善に対応する生薬治療が出現しました。
生薬治療はあくまでも実践的医療手段ですが、再現性の高い理論的な医療手段である西洋医学の台頭により、急性疾患の治療法は西洋医学にとって代わられました。特に日本では国政の後押しがあり、明治維新の際に伝統医学は表舞台から追われることになりました。
前置きが長くなりましたが、そもそも漢方薬には即効性があります。種類によって効果の出現時期は様々です。
即効性が期待される代表的な漢方薬を効果発現までの時間別にご紹介します。

1)10分以内

芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)

  • 薬効:こむら返り
  • 作用:筋肉の緊張を緩めます。
  • 解説:急激なふくらはぎの筋肉のひきつれに効果的です。飲んでから分単位で効果を認めます。応用してマラソンランナーが走っている時に症状が出たら飲むことがあります。その他に月経痛、尿路結石の痛み、腹部疝痛の緩和に有用です。

2)30分以内

大建中湯(だいけんちゅうとう)

  • 薬効:下痢、便秘、腹部膨満(イレウスを含む)
  • 作用:腸管の血行を促進して、生理的な運動を促進します。
  • 解説:過敏性腸症候群での腹痛に即効性があります。即効性がある反面、効果が切れる時間も同じくらい早いです。そのため、少しずつ頻回に分けて飲むと良いとされています。

六君子湯(りっくんしとう)

  • 薬効:胃もたれ、消化不良、胃炎、胃食道逆流症
  • 作用:胃の生理的な運動を促進します。生理活性物質グレリンの作用を増強させます。
  • 解説:胃の運動促進に即効性があります。消化管の他に視床下部・肺・心臓にも作用します。高齢者のフレイルに対するアンチエイジング作用(抗加齢作用)や、がん患者の末期合併症である「がん悪液質」の軽減にも有用です。

3)数時間以内

麻黄湯・葛根湯

  • 薬効:急性感染症
  • 作用:体温上昇、発汗作用、交感神経刺激作用があります。その結果、解熱効果が得られます。また免疫作用により感染防御作用があります。
  • 解説:体力のある人が風邪をひいて高熱を出した際には、2〜3時間毎に繰り返して飲むようにします。一気に体温を上げて発汗を促すことで解熱することを期待します。そのため、解熱剤を一緒に服用すると効果が落ちてしまうことになります。また葛根湯は、風邪の人と一緒に過ごした際に症状が出る前の段階に飲むことで、免疫活性化作用により感染予防になります。家族がインフルエンザウイルス感染症に罹った際の感染予防に葛根湯の服用は有用で、安定期の妊婦さんの予防にも安全性が報告されています。

小青竜湯

  • 薬効:鼻炎(水様鼻汁、鼻閉)、アレルギー性結膜炎、感冒
  • 作用:鼻汁分泌抑制作用、鎮咳作用
  • 解説:体力のある人の風邪症状や花粉症の症状に有用です。対症療法ではありますが、即効性があるため症状を認めてから飲むことで、症状が緩和されます。花粉症の際には、抗アレルギー剤や点鼻薬・点眼薬との併用は可能です。成分の麻黄に鼻汁抑制作用と覚醒作用がありますので、抗アレルギー剤で眠くなりやすい人にとっては併用をお勧めします。予防効果の発現時期について、抗アレルギー剤の場合は花粉飛散よりも早い時期から服用する必要があるのに対して、小青竜湯は即効性があることから症状出現後から服用します。

抑肝散・甘麦大棗湯

  • 薬効:不眠症、感情のコントロール
  • 作用:脳内の神経伝達物質の調整作用
  • 解説:不眠や情緒の不安定な状態で頓服することで即効性があります。家族など身近な親しい間柄で、一緒に飲むと効果が高まることが500年前から知られています。

五苓散

  • 薬効:嘔吐、下痢、脱水、口渇、浮腫、胃腸炎、頭痛
  • 作用:細胞レベルで、水分の過不足のバランスを調整します。
  • 解説:細胞膜にある水分子が通る門(アクアポリン、水チャネル)を調整することで、浮腫と脱水など正反対の症状のどちらにも有用です。全身作用がありますが、主に脳・消化管で作用します。即効性があるため、乗り物酔い、二日酔い、飛行機搭乗時の耳管閉塞による痛みなどに応用されます。

疎経活血湯

  • 薬効:筋肉痛、関節痛、神経痛
  • 作用:血行促進による温熱作用
  • 解説:特に冷えると増強する痛みに有用です。血行が良くなることで身体が温まり、症状が緩和します。急性疼痛にも慢性疼痛にも幅広く応用されます。

4)数日以内

安中散

  • 薬効:神経性胃炎、胸やけ、胃部痛、生理時の腹痛
  • 作用:温熱作用、鎮痛作用、制吐作用、制酸作用
  • 解説:軽症であれば1回服用するだけで楽になります。市販の漢方胃腸薬にも配合されていることが多く、実は葛根湯の次に馴染みのある漢方薬と言えそうです。

大黄甘草湯

  • 薬効:便秘症
  • 作用:瀉下作用
  • 解説:半日から数日で効果を認めます。大黄に含まれるセンノサイドという成分に瀉下作用があります。センノサイドが効果を発揮するには、ビフィドバクテリウムという腸内細菌によって大黄が代謝される必要なことが分かっています。その腸内細菌が少ない状態ですと、菌数が回復するまで効果発現には時間がかかることになります。また、抗生剤治療などで腸内細菌が乱れている場合には、効果が落ちることが知られています。

5)2週間以内

ほとんどの漢方薬は、1〜2週間で変化が現れます。その変化に対する自覚が弱い場合や身体所見でしか確認できない場合では、あたかも効いていないように感じることと思います。また、大黄甘草湯の項目で解説したように腸内環境によっては効果発現に時間がかかってしまう場合があります。
この項目では女性に多いトラブル「冷え」に対して用いる代表的な漢方薬についてご紹介します。

当帰芍薬散

  • 薬効:冷え症、月経困難症、更年期障害、不妊症、認知症、嗅覚障害
  • 作用:水分調節作用、血行促進作用、ホルモン様作用
  • 解説:冷えは万病の元と言われています。冷えが改善することで、月経に伴う不調が改善し、不妊体質の改善が期待されます。冷え症の治療には軽度の場合は本剤で、重度の場合は次項の当帰四逆加呉茱萸生姜湯が有用です。

当帰四逆加呉茱萸生姜湯

  • 薬効:しもやけ、下腹部痛、腰痛、頭痛
  • 作用:温熱作用、血行促進作用
  • 解説:冷え症が重くて、冬は毎年しもやけに悩まされている、夏でもクーラーの風に当たるのが辛い、といった状態に有用です。

漢方薬の副作用

一般に漢方薬は原料が天然素材だから副作用が少ないと思われていることが多い印象を受けます。しかし、原料の生薬そのものは薬理作用のある物質を含んでいますので、明確な効果がある裏返しに副作用もあります。
生薬による副作用の代表例として、小柴胡湯による間質性肺炎と偽性アルドステロン症があります。間質性肺炎は主に黄芩(オウゴン)という生薬によるもので、明確な機序は不明で重症化のリスクがあります。偽性アルドステロン症は甘草(カンゾウ)という生薬に含まれるグリチルリチンによるもので、むくみや高血圧、脱力、筋肉痛が見られます。一時、C型肝炎の治療にインターフェロンに加えて小柴胡湯が乱用されたことで、これらの副作用が注目されました。
他に、麻黄(マオウ)のエフェドリン作用による動悸や発汗、附子(ブシ)によるトリカブト中毒、黄耆(オウギ)による発疹、山梔子(サンシシ)の長期使用による腸間膜静脈硬化症、地黄(ジオウ)による胃腸障害、桂枝(ケイシ)によるシナモンアレルギーなどがあります。
甘草と麻黄は、量が増えると副作用のリスクが高くなります。そのため、しばしば2〜3種類の漢方薬を組み合わせることがありますが、同じ生薬の量が増え過ぎないよう注意が必要です。特に、芍薬甘草湯の甘草、麻黄湯の麻黄は、1剤だけでも多量に含まれていますので、数日以上の連続使用は避ける必要があります。

服薬上の注意

服薬上の注意

漢方薬を飲むにあたって、他の薬との併用で問題になることがあります。副作用の項でも触れましたが、漢方薬同士の併用は生薬のオーバラップに注意が必要です。市販薬の中には、商品名はカタカナであっても、原料が生薬だけのものや、西洋薬と生薬の合剤のものもあります。市販薬を併用する際には薬局で薬剤師に確認するようにして下さい。
西洋薬の中には、グレープフルーツ摂取が禁止されているものがあります。それは薬を肝臓で代謝するのに必要なCYPという酵素をグレープフルーツがブロックするために、薬物中毒になる可能性があるためです。一部の生薬にはCYPをブロックする作用がありますが、実際には西洋薬に漢方薬を併用することで深刻な中毒をきたした有害事象の報告はありません。
漢方薬を飲むタイミングは、処方箋には食前または食間(食事と食事の中間)とあるように、空腹時または食事の30分前が理想です。その理由は、食べ物の成分が生薬の代謝に影響したり、食物繊維が有効成分の吸収を抑制したりする可能性があるためです。しかしといっても、漢方薬を食後に飲むことで効果が消失する訳ではなく、少し落ちる程度ですので、食前に飲み忘れた場合でも気にすることはありません。たとえ食後になったとしても忘れないうちに飲むようにしましょう。

服薬時の工夫

病院で処方される漢方薬は、粉状になったエキス剤がほとんどです。煎じ薬をインスタントコーヒーのようにフリーズドライ製法で加工してあります。粉のままで飲んでも効果はありますが、本来の飲み方はあまり知られていないことですが、お湯に溶いてから飲みます。それによって味や匂いが気になるかと思いますが、味覚や嗅覚への刺激にも意味があると考えられています。
苦味による拒薬が問題となることが、年齢を問わず多々見受けられます。そのような場合でも、エキス剤を温めたココアやミルクに溶かすことで、舌の粘膜にある苦味を感じる細胞の感度が下がるために飲みやすくなります。
経管栄養を行っている人の場合では、特に粉のままではチューブが詰まりやすくなるため、しっかり溶かしてから注入することをおすすめします。お湯で溶かすと早くに溶けますが、水でも15分ほどおくことで8割以上は溶けます。
溶け残りは詰まりの原因になりますので、無理に注入しないで下さい。ちなみに漢方薬の投与量と効果に厳密な関連性はありませんので、人によっては少量でも十分に有効なことがあります。

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