愛着障害
愛着障害と自閉スペクトラム症は専門家にとっても違いが分かりにくいことが多々あります。さらにはその両者が合併していることもあり、支援がより一層難しいケースがあります。
愛着障害とは、養育者との愛着が何らかの理由で形成されず、子どもの情緒や対人関係に問題が生じた状態をいいます。主に虐待や養育者との離別が原因で、主に母親などの養育者と子どもとの間に愛着がうまく形成されないことによって生じます。乳幼児期の子どもが養育者と適切に愛着形成ができないことで、「過度に人を恐れる」「誰に対しても馴れ馴れしい」といった対人距離感の問題が生じます。
愛着(アタッチメント)とは、主に乳幼児期の子どもと養育者との間で形成される心理的に安定した関係のことです。子どもからの愛着応答の開始は生後3ヶ月頃で、いつも自分をお世話してくれる養育者と、そうではない人を区別して認識できるようになります。そして養育者と密着した日々を過ごすことで、ますます愛着形成を強固にしていきます。この時期に適切な環境で養育されないと、子どもは周囲に対して無関心になっていきます。そのため、子どもの成長発達には特定の養育者との愛着形成が不可欠といえます。一方で、養育者自身が愛着課題を抱えていると、子どもを大切にしたくても適切な養育ができず、安定した愛着形成が困難になります。そのようにして愛着課題は世代間伝達していくことが知られています。
子どもにとっての愛着の重要性は、次の3点があるといわれています。
- 人に対する基本的信頼感の獲得
- コミュニケーション能力の向上
- 心の安全基地を形成
子どもは不安感や危機感を抱くと、愛着の対象者に自分を守ってもらおうとします。そのように自分の身の安全を確保できて安心できる存在としての養育者は安全基地となり得ます。確固たる安全基地があることで、子どもは好奇心に突き動かされて探索行動に出ます。そしてまた不安・困難に出会うと安全基地に戻って安心感を得ようとします。それを繰り返すことで、積極性、意欲、ストレス耐性を獲得していくのです。
自閉スペクトラム症では生まれながらにして偏りがある発達特性があるのに対して、愛着障害の原因は子どもの生育環境という後天的なものです。そうは言っても、どちらも同じ乳幼児期から症状が現れることで、鑑別が困難となるケースがあります。いずれにしても、まず必要な支援は安全基地の形成です。養育者が子どもの安全基地となれるよう親子支援を行います。また養育者自身が心理的課題を抱えていて、実の親との関係で葛藤していることがあります。そのようにして心理的課題は世代を超えて子どもへと伝わっていくことがあります。多くの場合で世代間伝達すると言われています。
そのため支援の際には、家族全員をチームとして団結できる関係作りのため、家族療法による家族機能の復興を目指すことがとても大切なことだと考えています。